2014年4月14日月曜日

クロスストラップ使いが便利な「大きなポケット」sacoche for(サコッシュ・フォー)について

サコッシュとは、ツール・ド・フランスなどのサイクルロードレースでほんの一時も足を着くことことなく一日200kmにも及ぶ距離を走行する選手に補給食などを手渡すための布製の簡単な袋で、受け取った選手はこれを襷がけにして中のものを口にして、それが終われば路肩に捨ててしまいます。いわば使い捨ての袋なのですが、これがどうして、わたしたちのようなホビーサイクリストが使ってもなかなか便利なものでした。

ところが、いかんせんサコッシュは簡単な袋に過ぎません。丸めてバックポケットにでも突っ込んでおいて、いざ必要となって使う分には我慢できるのですが、普段から使うにはサコッシュはなんとも心もとないものでした。
それをもっとしっかりとつくりこんだ製品も世の中にはありますが、それらはコンパクトなショルダーバッグ、若しくはメッセンジャーバッグといった印象で、わたしたちが考えるサコッシュ本来の姿とは異なるものに映りました。

そこで、もっとサコッシュらしい身軽さを持ち、なおかつしっかりしたものはできないかと考えてつくったのが、TOMOKABANsacoche for(サコッシュ・フォー)
なのです。

サイクルロードレースで使われるサコッシュは、布の袋に同じく布のショルダーストラップが縫いつけられたもので、ストラップの長さ調整をしたいと思った場合、その途中で結くぐらいしか手がありません。仮にストラップの長さを短くしても、胸側にぶら下がってきて、本体がペダリングする膝に当たって邪魔になってしまいます。

サイクルロードレースの補給は短時間で終わるためその間だけサコッシュが邪魔になったとしても目をつぶることができるでしょうが、わたしたちが長時間サイクリングを行おうとすると、サコッシュが邪魔になっては快適性が損なわれてしまいます。
sacoche for(サコッシュ・フォー)は、上の画像のようにストラップの端についたサスペンダークリップをサコッシュ本体の左下に取り付ければ、3本になったストラップが下の画像の様に胸元でクロスして腰の部分で身体に固定されます。
ストラップは左肩と左右の腰の3点で固定されてますから、左肩からズレ落ちないようにバックルを使って長さ調整を行えばきれいに安定します。
仮に上の画像の向かって右下に伸びているクロスストラップにあたる部分が多少緩くなっても、サコッシュ本体は下の画像のようにお腹の方まで回り込むことがなくペダリングやサドルへの乗り降りの邪魔にはなりません。
このように、ロードバイクで使用しても快適であることが、sacoche for(サコッシュ・フォー)の最大の魅力だといえます。

こうやって襷がけに背負うタイプのショルダーバッグ、そうメッセンジャーバッグなどには、自転車での使用がしやすいようにクロスストラップと呼ばれるパーツが付いていることは多くの方がご存知だと思います。
TOMOKABANのsacoche for(サコッシュ・フォー)が画期的なのは、多くの場合別パーツになっているクロスストラップを1本のストラップとしてシンプルにまとめた点にあります。
実はこのストラップ、最初からこう使うために用意されたものではありませんでした。

多くのショルダーバッグ…斜めがけするバッグ…は、そのストラップの片側がバックル(長さ調整を行うためのパーツ)から折り返して、ふた重になっています。しかし、その仕様はシンプルが売りのsacoche forには不要だろうと考えたわたしたちは、バックルから先の部分をだらりと垂れさせることにしたのです。また、このやり方ならストラップの長短の調整幅が大きいこともあってそうしたのです。
ところが、そうすると胸元から垂れ下がった部分が邪魔で、下手をすればフロントブレーキなどに絡まる恐れもあって、これはありがたいことではありませんでした。

そこで、その部分が垂れないようにどこかに固定してやろうと工夫したのが、下のサスペンダークリップでした。
このサスペンダークリップ、元来ズボン吊りなどに使われているパーツなのですが、お辞儀させるように中折れさせると開き真っ直ぐに戻すと閉じるという単純な機構が、余ったストラップの先をどこかに固定するという用途にまさにうってつけでした。

 sacoche for(サコッシュ・フォー)の開発は昨年2013年の夏頃から始められ、同年11月24日の自転車市庭Vol.1.5で製品として披露することになりました。
その時点では、ロードバイクなどの前傾姿勢で使う際にはストラップを出来るだけ短く調整してサコッシュ本体を背中側に回してペダリングの邪魔にならないようすればいいと考えていました。
ところが、実際に使ってみると、どんなにストラップを短くしていても、背中に回していたサコッシュ本体がいつの間にかおなか側にズレてきて、微妙ではあれペダリングする膝に当たることがわかったのです。これでは本格的な走行を行う際には適してはおらず、結局、 sacoche for(サコッシュ・フォー)はサコッシュ風のショルダーバッグ、ポシェットの類と見なされ、本格的なロードバイク愛好者を満足させるに至りませんでした。

本年2月に福岡市中央区のPROMENADERさんを訪ねた際にも、オーナーの小原さんにその点を指摘されました。「自転車用を標榜するなら、クロスストラップを付属させ、背中からズレない工夫をするべきだ」と。

そもそもシンプルにをモットーに製品化したsacoche for(サコッシュ・フォー)ですから、それに別パーツでクロスストラップを付けることは大きく躊躇われました。ましてや、そのころ考えていたクロスストラップはメッセンジャーバッグの代表として知られるTIMBUK2などで見られる両端にナスカンと呼ばれる連結のためのパーツと長さ調整を行うバックルが付いたもので、sacoche for(サコッシュ・フォー)に用いるにはシンプルさに欠けると感じていたのです。

ところが、そのクロスストラップの機能を、わたしたちがそうと気づかなかっただけで、sacoche for(サコッシュ・フォー)はすでに実装していたのです。

3月2日に行われた熊本県サイクリング協会主催の天草下島一周サイクルマラソンに、TOMOKABANスタッフのひとりがボランティアスタッフとして参加して、Bコース96kmを伴走することになりました。
イベントで伴走する際にsacoche for(サコッシュ・フォー)を背負っていたのですが、どんなにストラップを短くしてもやはり背中からズレてきて膝に当たってしまう…どうやったらズレずに固定できるのかと考えて、その時初めて上で紹介したサスペンダークリップを本体の左下隅に留める装着方法を試してみたのです。
そうしたところ、実に快適、なんのストレスも感じないまま…その日の苓北の向かい風はとんでもないものでしたが…96kmの距離を難なく走り切ることができ、机上で考えるものと実際の前線のそれは大きく違うのだと身を持って知ることになりました。

「すべての自転車ユーザーに『大きなポケット』を」というわたしたちのスローガンをカタチにした、TOMOKABANのsacoche for(サコッシュ・フォー)。快適なサイクリングの一助になればと、サイクリストのひとりとして願うばかりです。
(Written by TOMOKABAN)